1. ●トップページ
  2.  > 
  3. 【コラム】梅田陽子のマインドボディ便り

梅田陽子のマインドボディ便り

更新日:2009.03.01(日)

【第4話】

ネイリストの知人は、高齢者施設でお化粧のボランティアをしています。

何色が人気?と聞くと期待通りに「ピンク系」と返ってきました。でも先日、 透き通るような色白の女性に「黒はある?」と聞かれたそうです。 手持ちになく赤と青を混ぜて作ったところ、深い紫に、「キレイ」と満足されたとのこと。

「花の命は結構長い、女ですもの~」という、子供の頃に耳にした生命保険のコマーシャル。 あの言葉のリズムは、今もはっきり覚えています。「女は不死身よずっと色づく、 女はそんな生き物よ~」とでも聞こえたのでしょうか。女である事で、命の保障を されたような、そんな安心感と心強さを覚えています。

般若心経に「色即是空」(しきそくぜくう)という文言があります。

「色」とはサンスクリット語でruupa(ルーパ)と言い、物質とか外界とか形のあるモノを さすようです。色は空である。形あるものは実は何もなく、ただ移り変わっているだけ。 とでも理解するのでしょうか。

「あの雲はドラえもんの形をしている」と言っても、次に見た人は「いやカバだ」と言い 同時に見た人さえ「茶碗だ」と言う。結局、同意はなく、そして二度ともとの形には戻らない。 だから、誰が正解なのか答えはない。ただ、その瞬間に「わ~っ!ドラえもんだ!」と感じた心が残るだけ。

白い指に塗られた深い紫は、彼女にとって女の黒に見えたのでしょうか。それをみた、ピンクの指先の方はどう思ったのでしょうか?

それぞれの手に色とりどりの爪。見ているその色は、実はそれは自分で見ている色であって、 本当はその色がついているのではない。見えている色は自分の心が決めている色であって、 本当の色はどこにもない。

有るのはひとりひとりの色づく指先があり、すべて彼女たちの命を輝かせているということだけ。

高齢者体操教室。目の前のたくさんの女たちには、たくさんの色がある。憂い潤い移ろい続ける色がある。 心を鬼にして、心を真綿にして、塗り続けた色がある。

だから決め付けないで、喜ぶのは淡いピンク。決め付けないで、戻れるものなら一晩中、 石鹸で洗っていたい。私にだって白い指の時があった。この色で思い出す大事な人だっていた。 「無理しないで」ばかり言わないで!私は今も上を向いて咲いている。

高齢者ではなく、ここは女性体操教室。頬を桃色にして、一緒に動きましょう。 色即是空、花の命は死ぬまでつづく。あなたは女、私も女、さあ一緒に動きましょう。



梅田 陽子



【コラム更新一覧】