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- 【コラム】梅田陽子のマインドボディ便り
梅田陽子のマインドボディ便り
更新日:2011.09.01(水)
【第20話】
被災地レポート3
8月上旬、3度目の仙台空港に降り立ちました。1度目の4月末は、おそろいのジャンパーを着たグループがあちこちに見られました。
仙台市内へ向かう高速の右の車窓からは船や車が泥にまみれて転がり、左は本当は田畑なのだろう土地が静かに広がっていました。2度目の5月末は、ジャンパー姿は減り、バスから見える荒野からも船と車の数が減っていました。
そして今回の3度目では、復興した空港ロビーに入ることができました。所狭しと貼ってあった写真や応援メッセージは中央ロビーに集められ、横の柱には「津波到達高さ3.02m」と書かれていました。
車窓から見ていた色のない世界には夏の日差しを浴びた緑の草が何事もなかったかのように背を伸ばしていました。色があるということは、これだけ人の心の緊張をほどくものだと気づきました。
その日、仙台での業務を終えた私は(もちろん牛タンは外さず食べて)、新幹線はくとで岩手県北部へ移動。二戸で降り高速バスで海岸の被災地へ向かいました。
今回の目的は、村の仮設住宅にある各集会所を拠点としてサロンを開く、住民ボランティアさんの研修と、管内の保健師さんに対する特定保健指導の研修(といっても予定されているのは特定健診ではなく災害時健診だそうです)。 これら2つの研修の依頼をいただき訪問しました。
まず、住民ボランティアさんの研修についてですが、阪神大震災などでは、仮設住宅に入居したことにより元の地域コミュニティが崩壊し、人間関係が希薄になったことでメンタルヘルス不調が問題視されました。
この反省点を受け、今回の仮設住宅の入居に際しては地域コミュニティをそのまま引き継ぎ、閉じこもり防止や見守り強化のため、「サロン」と称した場づくりが重要視されています。
サロンを運営いただくボランティアさんらは、これまで精神科医から「傾聴」を繰り返し学ばれてきました。そこで今回私からは、話し出すきっかけづくりとして「身体の話から入る」ことを提案することにしました。
誰でも顔を見るなり悩みを話し出すことはまれで、まずたわいもない世間話から始まるものでしょう。ですので「お元気ですか?」「いやあ肩が凝って・・・」となれば、「では肩を動かしましょうか」と一緒に体操をすると、ここから話題を膨らませたり次の話に進みやすくなります。
傾聴の入り口として、肩ほぐし体操からコミュニケーションをとり、話しやすい環境をつくることを提案しました。しかし、人は日によって気分が違うものです。話したい日もあれば、そうでない日もあります。話してスッキリすることもあれば、話しすぎて余計に不安になることもあります。
傾聴する側は、聞き出すことなく寄り添い、解決してあげようとするのではなく専門家につなぐことが大切になります。とはいってもボランティアさんも被災者です。仮設住宅で狭くて暑くて、不便な思いをされています。
確かに避難所よりプライバシーは保たれるようになりました。しかし、電話の声も風呂桶の音も筒抜けです。贅沢は言っていられない、でも先を考えると不安で眠れなくなる。そんな日々を誰もが送っているのです。
次に、翌日担当した保健師さんの研修についてですが、驚いたことに、もう震災後5ヶ月になるのに初めて皆さんが揃われ、当日からの状況報告がなされたのです。
書類には県内各地域の第1波の時間やその高さ、避難の状況など細かく記されその惨事の状況がずっしりと伝わってきました。ここにいる皆さんがこの中にいたのだなと思うと、淡々と書面に目を通す横顔から試練に耐えた強さを感じました。
そして、いつも笑顔の村の保健師さんは、報告書さえかけない状況が今もなお続いており、他の方がまとめた数字を基に、口頭で報告されました。それだけ毎日毎日前に進むことで精一杯なのです。
村に2人いる保健師のお一人は、流された町の中心にある保育所から子供たちを高台に誘導し、そのままそこで2日間動けなかったそうです。もうお一人は、研修で出張中でした。急いで帰ると4波5波の最中で、村に入るのを消防士に止められ、それでも入ろうとしたら、役場はないかもしれないと言われたそうです。
翌朝がれきの山を越え、くぐり、たどり着いた役場で村長さんに「遅くなった、今帰りました」と報告したら「無事でよかった」と言葉をかけられ、やっとほっとしたそうです。その日からずっとお二人は、震災対応のために走り続けておられます。
「心の健康に運動は必要だとずっと思っている。今までいろいろやってきた、でも運動は難しい、自分たちだけではできないことだ。」そう話される彼女たちの役に立ちたい。
次の機会は9月、その次は11月。雪が降り鉛色の空になる前に、やらなければならないことがあります。それはこの数年間、秋田の自殺予防活動で少しずつ学んできました。その経験を生かさないと、この村で。そう強く思っています。
梅田 陽子
仮設空港の壁一面にあった応援メッセージが、広い空港ロビーの一角に集められていた。柱に記された青線が、津波の高さ。
茶色一色だった津波の跡に、緑がかえってきていた。
空いている仮設住宅の一室。単身1K、2人は2K。両開き冷蔵庫にハイビジョンテレビと家電は結構いいけど単身には大きすぎる。などと言ってはいけないけれど、狭い。ここで「仮設でできる体操」の撮影をした。当初は、肩こりとか腰痛体操を色々考えた。でも入居者を訪問して分かった。わざわざ体操はしない。できたものは次回ご報告。
ユニットバスなら仕方がないけれど、この段差がきつい。
(左)仮設は防水とか防音とか追加工事中。(右)郵便屋さんは、撮影にOKをくれた。
左は6月、右は8月、2カ月で変わった。
全壊した大きな水族館は、駅前の家具屋さん後に「まちなか水族館」として再生。オープン日に遭遇!
ハコフグ、クラゲに並んで、どこにでもいるメダカもグッピーも展示されていた。
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