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梅田陽子のマインドボディ便り
更新日:2010.07.01(木)
【第12話】
ワークライフバランス
成人して間もなく、中学校の体育の教員になりました。私は22歳、 生徒は12~14歳。その頃は同年代の先生がたくさんいて、皆さん 子供たちと毎日体当たりで日々を過ごしていました。
最近、その頃の教師仲間と久しぶりに食事に行きました。皆さん それなりの管理職となり風格がついてきていますが、熱い思いは 変わっていません。一人の先生が、「あのころ放課後の同僚との 時間がなかったら本当につらい毎日だったなあ」と振り返り、自 分も教員時代に心が戻っていきました。
指導要領(教員のマニュアル)も理解不十分な自分がまさしく格 闘しながら週に15~20時間の授業を担当し、「部活顧問」をし「 生徒指導」をし「性教育」をし「体育祭マスゲーム」をしてきま した。
思春期真っ只中の中学生は、「先生大好き」と抱きついてきた翌 日には「大嫌い」と無視してきたり、「もうしません」と泣きな がら反省した翌週には、「警察ですが補導しました」の電話の声 に落胆し引き取りに行ったり。
この時期は夏祭りで街は賑わいますが、教師にとっては巡回で終 日休みなく動かなければならない恐ろしい時期です。ある時、単 車で見まわっていると、自分が警察に職務質問にあいました。体 育の教師ですので、短パンTシャツサングラスです。
それが悪かったのか、巡回中だといくら説明しても信じてもらえ ず、また携帯電話もありませんので学校に連絡もつかず、危うく 自分が補導されそうになりました。
落ち込んで学校に戻ったら、同僚が順に帰校し、それぞれの苦労 を愚痴るのですが、夜遊びする生徒たちとさほど変わらない次元 で、指導ではなく喧嘩して帰ってきたような、自分と同じように 到底教職とは程遠い「巡回指導」をしていました。
このような毎日も、ぼちぼちならよいでしょうが、全力疾走で続 けると疲れます。しかし、仲間と共に走るのであればエネルギー は続くものです。
1日5時間持久走の授業をしても、放課後教職員バレーボール大会 の練習をすればストレスが発散できました。終日プールに浸たり きりであっても、職員室に戻りたくさんの先生に「体育はプール 大変やねえ~お疲れさん!」と言って「おやつ」をもらえれば元 気になりました。
休日には、キャンプやスケート、海水浴などまるで野外活動部の ような状態で、仲間と共に過ごしていました。その中で、日ごろ の悩みを打ちあけ合い、励まし合い、時には激しく意見を交わし、 一緒に半人前から育っていったのだと思います。
今、職場では仕事とプライベートのバランスを重要視する「ワー クライフバランス」が盛んに提唱されています。「ワークファミ リーバランス」ともいわれ、職場に重きを取られ過ぎず、家族と の時間が少なくならないようバランス良く生活をしようといわれ ています。
26歳で渡米したとき、語学学校の放課後、誰も一緒に過ごそうと せず、みんな家庭に直帰していました。それが自分にとって不自 然で、孤独感にさいなまれたことがありました。
私は当初ホームステイをしていましたが、高齢の女性の一人住ま いにステイしており、ほとんど帰っても会話がないため余計に友 人たちと放課後の時間を過ごしたかったのです。
毎日「余暇」のない私は徐々にいわゆる「引きこもり」になりま した。この話は長くなるので今度にしますが、日本の生活では職 場の仲間との息抜きの時間は、仕事へのエネルギーを生む重要な ひと時と思います。
もちろん直ぐに家庭に帰る「アメリカ式」には良いところがある と、後にわかってきましたが、教員時代の自分の心身のバランス は間違いなく同僚とのひと時によって保たれていました。私にと って職場の同僚はファミリーだったのです。
ワークライフバランスとは何なのでしょうか?その人にとっての バランスは「ワーク」「ライフ」とどこで分けるのかは人によっ て様々です。ワークの中にライフが含まれることもあり、もしか したらライフの中にワークが含まれる人もいるかもしれません。
自分にとって生活のバランスをとること。一人ひとりが自分の24 時間を自分なりに見直すことが必要ということなのかもしれません。
梅田 陽子
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