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梅田陽子のマインドボディ便り

更新日:2010.11.01(月)

【第14話】
能力向上

アメリカにはメイヨー・クリニック(Mayo Clinic)http://www.mayoclinic.com/ というとても優れていると有名な総合病院があります。国内外で高い評価を受けている医療研究機関でもあります。

The needs of the patient come first.(患者のニーズが第一である)。また、Mayo will provide the best care to every patient every day through integrated clinical practice, education, and research.(メイヨーは統合的な医療活動・教育・研究を通じて、毎日全ての患者に最善の治療を提供する)というミッションを掲げているそうです。

このMayo Clinicのサイトには、Depression and anxiety: Exercise eases symptoms(抑うつと不安:運動は症状を和らげる)というスタッフがメッセージを送るページがあります。

そこにはDepression symptoms often improve with exercise. Here are some realistic tips to help you get started and stay motivated. (抑うつ症状は運動で良くなることがあり、スタートし動機を継続するためにちょっとしたヒントがここにある)として、様々な説明が添えられています。

不安、落ち込みと運動の関連が、まったく明白であるというわけではないが、生活習慣病の改善を含め、精神面を合わせた多くの健康問題を解決する手立てであると示しています。

How does exercise help depression and anxiety?(どのように、運動は抑うつと不安を助けますか?)との項目では、落ち込みを低下させ幸福感をもたらすエンドルフィンという脳内物質をリリースする。免疫を低下させる化学物質を軽減する。体温を上昇させる。などと解説され、運動に挑戦することで自信を高め、マイナス思考から気持ちを切り替えることができ、社会性を向上させるとすすめています。

What kind of exercise is best?(どんな運動がベストか?)の項目では、これをしなさいと特定するのではなくゴロゴロしている生活を見直し、日常生活の中に身体活動を取り入れることをすすめています

How much is enough? (頻度は?)では1日30分以上の運動を週に3~5日行うと、うつ状態を改善させることができますし、わずか10~15分の運動でも違いを感じることができます。と統計上でも証明されていると説明しています。

How do I get started — and stay motivated?(どうやって始めて動機を維持させるの?)の項目は多分日本では見られない面白い解説があります。但し医師が介入した場合の内容になっています。

①医師と何を楽しんで続けて行えるかを決めます。次にどのような方法で行うかを考えます。本人の置かれた環境で一番行いやすい内容や時間帯を決めるのです。②メンタルヘルスプロバイダー(メンタルのホームドクター的存在)と相談しサポートを得るようにすること。③運動をしなければならないと義務的になるのではなく、薬と同じように重要性を持って取り組むこと。④運動実施の障害になっていることを具体的に考えること。例えば一緒に運動する配偶者が嫌なら友人を見つける。お金が費やせない場合は無料でできる運動(歩くなど)をする。⑤ちょっとした小さい出来事で休む日があっても、それは継続に障害がおこるほどのことではない。と解説し、そして最後にDo I need to see my doctor?で実施の注意をうながしています。

きちんと医師と相談して進めること。もし、運動しても改善が見られない場合は再度医師やプロバイダーと話して再考すること。運動は薬や他の精神療法の代替え品ではないことを確認しています(運動しているから勝手に薬を減らしてもいいと言う意味ではないと言うこと)。

このように総合病院が一般向けに、これほど詳しく載せているホームページは日本では探すのが困難でしょう。もし見つけられた方はぜひ教えてください。

私はこのホームページをなぜ見たのでしょうか?それは学会に参加していると、よく「Mayo Clinicでは・・・」と医師が話していたことで「めいようクリニックって何?」と思っていたこと。

アメリカの専門機関で運動療法がすすめられていると医師が発表していたスライドに「Mayo Clinic」と書かれていたこと(しかし私はマヨクリニックと読んでいた)。「Mayo=めいよう」となるまでには時間がかかったのです。

とりあえず検索していたら辿り着き、やっと理解できました。このように、広い範囲の中からいち早く欲しい情報を得るには、一人では大変です。みんなが揃って回り道をする必要はありません。ラッキーしたものがそれを仲間に分ければいいのです。

お互いに助け合い高め合い自分たちの能力が上がるようにしていくことが重要です。もちろん競争社会ですから、人より秀でていないと前進できません。しかし、私たちは今、自分たちの中で競争していくことよりも、全体のレベルを上げていくことが重要なのです。

運動指導者は例えば健康運動指導士を取得したからといって、その資格で社会一般の収入を得て生活ができますか?健康体力づくり事業財団の調査では、平均年収は200万円が一番多いと報告されています。

日本で今何が問題となっていますか?与党は何と言っていますか?医療と雇用なのです。医療費が向上し続けているのはなぜですか?もちろん高齢化社会は拍車をかけています。しかし予防が十分ではありません。

だからメタボ検診が保健者に義務化されたのです。だから来年度からメンタルヘルス検診が健康診断に組込まれるよう決定したのです。

その予防とは何でしょうか?「1に運動、2に食事・・・」このメタボリック予防の標語は今や健康づくり関係者は皆知っているとおり、1に運動なのです。しかし、運動を必要としている多くの人へ運動指導者は届いていますか?NO!です。スポーツクラブや体育館など意欲のある人たちが集まる所に「場」が設定され、そこで運動指導に従事しているのがほとんどです。

それは人口のたった5%です。残る95%の方々と、どこで接すればよいのでしょうか?その道筋がほとんどないのです。それはどうしてでしょうか?運動指導者の指導レベルが信頼に値しないから、信頼が必要な「場」を与えられないのです。

医師免許を取ればどんな医者でも診察ができます。腕を知らずに私たちは待合室から呼ばれる診察室に入っていきます。それは国の制度で一定以上の医療能力があるとお墨付きを得ているからであり、そのお墨付きを私たちは信頼しているからです。

では運動指導者のレベルは一定以上あると信頼されているでしょうか?例えばフィットネスクラブに入会した人は担当したインストラクターに、健康管理を任せたいと思う人もいれば、ただのアルバイトと揶揄する人もいます。

当たり外れがあると、その差は大きいと多くの人が知っています。そのような運動指導者に広い職域を国は与えるでしょうか?怖くてできないでしょう。私たち運動指導者は能力がバラバラであることが国や国民から信頼を得られない大きな要因なのです。

皆で高めあっていく姿勢がいま重要なのだと思います。「いいえ、いろんな資格をとってそれをキャリアの一つとして証明していけばよい。それがない人は能力が低いと一般的に分かるはず。」という意見もあります。確かに全く否定はできません。

しかし後2年すれば大学に新設された新しいスポーツ系の学部から卒業生が社会に出てきます。有名大学の看板と健康運動指導士という資格を持って。その彼らに、健康運動指導士は持っていない、しかし多くの任意資格をもち現場を重ねてきた経歴はある。そんな指導者はどう立ち向かえばよいのでしょうか?

今、私たちは自分のことではなく、自分たちのことを考えていかなければならないのです。


梅田 陽子



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