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梅田陽子のマインドボディ便り

更新日:2010.03.01(月)

【第10話】
慎み深さ

清水寺で珍しくおみくじを引きました。「大吉!」なんとすばらし い!幸先がよいとワクワクしながら一行目を読むと「よろず慎み深 くせずば人の憎しみを受け災難にあうやもしれず」・・・・・・・。 えっ大吉よね?と思いながら読み急ぐと「急ぐべからず」とある。     

これって大吉よねとまじまじ見入る私を横目に、末吉の知人はニコ ニコと枝に結びつけながら「大吉はね、持って帰っていいんだよ!」 と言ったのです。「はい、そうさせていただきます」嘘か本当かは 知らないけれど、そうした方がいい気がして財布にしまい込みました。

控え目に、出しゃばらず、用心して、慎重に・・・・など両親から 常に言われてきたことを思い出しつつ、こう注意されるようになっ たのは、いつ頃からだったのかを考えました。

幼いころは活動的で したが、全てがそうではありませんでした。学校では手を挙げて発 言できず、本読みが当たると失敗しないように読むことだけに集中 したのを覚えています。

赤面して汗をかきながら心臓は聞こえるぐらいドキドキでした。勉 強は不得意でしたので、とにかく当たらないように授業中は常にう つ向いていました。

みんなで友人の誕生日プレゼントを買うはずが、自分だけ仲間外れ にされた時がありました。母が、「陽子ちゃんも一緒に入れたげて ね」と言いながら一人一人に小銭を渡していたのを覚えて います。割り勘の原理を子供が理解できたとは思えませんが、母の おかげで仲間入りができるような子供でした。

「仲間に入れて。一緒にいたい。」そう言うには何か条件がいるの か?単にそれが言えないだけなのか?よくわかりませんが、思いを 言葉にするのが不得意でした。

苦手なことには不安がつきまとうものです。今振り返れば、勉強も 友達づきあいも「失敗しない自分」を表現することに努めていた うに思います。

失敗から学ぶと言うように、成功も失敗も同じ生きる糧なのですが、 失敗をどのように糧にしてよいのかつからなかったのかもしれませ んし、失敗も成功も丸ごと個性だと表現できなったのかもしれませ ん。

一品モノにこだわるように、人と違う自分でありたいと思う人はた くさんいます。「普通の人ですね」より「ちょっと変わった人です ね」と言われることのほうが褒め言葉だったりするわけで、人と違 う自分づくりのために、好きなことに没頭し個性を磨いたりします。

何のためにでしょうか?それは、たくさんの人に自分が認められた いと思うからではないでしょうか。

でも、いくら個性的であったとしても、それは集団の中にいるから こそ個性と認められるわけで、一人で居たら比較対象がないのでど のようにしていても個性的かどうか判断はつきません。人は人と関 わらずことで、自分を発見するのでしょう。

今、自分探しをし続けるアラサー、アラフォーが世の中にあふれて います。その人たちの中には、自分を探したいけれど、人と関わら ずことは避けたいと言う人がいます。その矛盾に気がつかないから、 いつまでも彼らの自分探しは続きます。

もしかしたら、彼らは幼いころの私のように「失敗の個性」は受け 入れてもらえないと思い、人と関わるのを避けているのかもしれま せん。

「慎み深さ」とは何なのでしょうか?もしかしたら、単に出しゃば らないとか、控えると言うのではなく、真に心の深いところで、自 分の良いところ悪いところ全てをひとつと捉えることではないでし ょうか。「慎」の漢字の由来を調べると「充実して隙間のない心・ いつわりのない心」とありました。


梅田 陽子



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