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梅田陽子のマインドボディ便り
更新日:2015.07.10(金)
【第46話】
被災地と勤労者の心の「今」
東北では、平成25年よりメディカルメガバンクという事業が始まっています。通常は健康診断だけだったのですが、未曽有の被害を受けた被災地において、大きなストレスが今後の健康にどのように影響を及ぼしていくのかを大規模に調査することになり始まった事業です。
宮城と岩手の沿岸を中心に3世代という長期間を調べて行きます。専門のサイトによる説明では「小児においては、アレルギー疾患、発達障害、PTSD等の各疾患が増加あるいは症状が悪化することが懸念されます。また、成人においては、被災後にPTSD等の精神神経疾患が増加すること、また、ストレスにより喫煙本数・ 飲酒量が増える、心理的ストレス負荷がかかる等の理由により各種生活習慣病が増加していくことが懸念されます。」と記されています。
宮城県の中心機関である東北大による、県内の約7000人を対象にした2013年度の調査の報告が以下の様にありました。「東日本大震災の津波被害を受けた沿岸部は、抑うつ傾向や心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状を示す人の割合が、内陸部より高かった。「気分がふさぎ込む」といった抑うつ症状を訴えた人は、沿岸部は29・6%で、内陸部の25・4%を上回った。震災を思い出して生活や仕事に支障が出るなど、PTSDの症状があった人は沿岸部で5・0%に上り、内陸部の2・4%の2倍以上だった。」という報告です。
発災後、現在も岩手県久慈管内の自治体と共に活動を続けていますが、4年が経過していますが一概に「日にち薬」とは言えないと感じています。高台の公営住宅への移転など、住環境は徐々に整ってきていますが、しかしながら個人差はとても大きく、環境が変わるたびに新たなストレスが生まれているのではないかと思います。
次に日本の勤労者に目を転じますと、厚生労働省から、仕事のストレスなどで「心の病」を患って、労働災害(労災)と認められた人が過去最多となったとの報告がありました。
過労死などの労災補償状況ですが、「2014年度にうつ病などの心の病になって労災を請求した人は1456人で、統計が残る1983年度以降で最も多かった。認定も最多で、30~40代が約6割を占めている。原因別では、労災事故など「悲惨な事故や災害を体験・目撃」が一番多かった。」という内容です。
また、心の病で労災認定された人のうち、自殺や自殺未遂をした人は前年度より6割増の99人で、こちらも過去最多だったようです。
こうした労災に、影響しているのは長時間労働のようで、時間外労働が「過労死の危険ライン」とされる月80時間以上の人は約4割、同160時間以上は1割強であり、自殺や自殺未遂をした人に絞ると、月80時間以上の割合は約6割に高まるとの事です。長時間労働に関しては、企業側の管理が年々強化されているのですが、実際の数字にはなかなか表れていません。これらを歯止めするため今年の12月1日には、ストレスチェック制度がスタートしますが、内容を把握し体制を整えるのは至難の業で、多くの企業が四苦八苦しているというのが現状です。このストレスチェックは、早期発見→医療へ繋ぐことが目的ではなく、「一次予防」すなわち誰もが自分の心身の状況に早く気づき、セルフケアするよう促すことを第一の目的とされています。
運動はストレス解消になるなど、メンタルヘルス不調の予防や改善に効果的ですが、誰もが動くことを好んでいるわけではなく、動くこと自体がストレスであるとも言えます。運動不足は種々の問題源になりますが、「運動は善!」と理屈で羽交い締めにされた側は息苦しく感じるものです。動くことが好きな人、できる限り動きたくない人、方法や量などは一人一人違います。そんな「人」にこの運動が良い!と規定のプログラムをはめ込むのではなく、その間に入る。人とプログラムがうまく噛み合うように橋渡しするのが運動を支援指導する専門家の役目であり、その人たちが磨く技ではないかと思います。
こころの健康づくりをからだからアプローチする。 私たちは今複数の企業や自治体の方々とスクラムを組み、それぞれに合った方法は何か?を模索しながら前進しており活動はどんどん膨らんできています。心を学び体に生かして行きたいと思っておられる運動支援指導を専門家のみなさま、共に歩いて行きましょう!!
梅田陽子
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