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梅田陽子のマインドボディ便り
更新日:2012.03.01(木)
【第23話】
我が国の抱える課題に対応した活動
昨年の2月14日に私は、政策修士論文「健康運動指導士を核とした健康増進政策~国家資格を視点に~」を仕上げその公聴会(試験)にのぞんでいました。
その丁度1年後の今年2月15日、厚生労働省から「次期国民健康づくり運動プランの素案」(※1) が発表されました。国家資格化されていない運動指導専門家は、健康増進を担う専門職として社会から認知されているとは言えない職業です。
個人の能力を向上させたり、たくさんの喜びの声を集積しても、最低限どのような能力があり、その能力を持って国民の健康増進に役立っているという基準はありません。個人のレベルの差が大きいのは、医者や弁護士でも当てはまるかもしれません。
しかし、病院や弁護士事務所は法律で保障された看板であり、それを信じて国民はゆだねるのです。それが運動指導者にはありません。それを社会的に保障できるものは何もないのです。そのような中、運動指導者を認め始めたのが特定保健指導からでした。
しかし、そこでも「運動指導に関する専門的知識及び技術を有すると認められる者」として示されたのは、「看護師、栄養士、歯科医師、薬剤師、助産師、准看護師、理学療法士」とされました。(※2)
その次に担当として認定されているのが「同等以上の能力を有すると認められる者」として、「財団法人健康体力づくり事業財団が認定する健康運動指導士」と「THP指針に基づく運動指導担当者(ヘルスケアトレーナー)で追加研修を受講したもの」と、やっと運動指導専門家が出てきたのです。
このように、特定保健指導の運動指導の担当は、健康運動指導士らに優先的に委ねられておらず、そこには、医師や歯科医師等、業務に運動指導があるとは想像しがたい数多くの医療職種が明記されているのです。
このような現実を運動指導者の背景にあると論じてから一年後、次期の素案が発表されました。私たちはどのように社会的に見られているのでしょうか?運動指導を生業としている方々は、この政策をどのような気持ちで見ておられますか?
もし「知らない」のであれば今から注目しましょう。「興味がない」のであれば報酬が少ないとか、雇ってもらえないと自己主張しても、雇用者に相手にされないのは当たり前でしょう。自分たちのことに興味をもって学び、この職業に従事したいものです。
さて、素案の内容ですが、国民の健康の増進の推進に関する基本的な方向としては、1.健康寿命の延伸と健康格差の縮小、2.生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底、 3. 社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上、4.健康を支え、守るための社会環境の整備、5.多様な関係者による連携のとれた効果的な健康増進の取組の推進、の5つがあげられました。
この健康増進を担う人材としてあげられたのは「地方公共団体においては、医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、管理栄養士、栄養士、歯科衛生士その他の職員が、栄養・食生活、身体活動・運動、休養・こころの健康づくり、喫煙、飲酒、歯・口腔の健康等の生活習慣全般についての保健指導及び住民からの相談を担当する。」とされており、保健指導と相談の担当者には運動指導の専門家は入っていません。
続いて「国及び地方公共団体は、健康増進に関する施策を推進するための保健師、管理栄養士等の確保及び資質の向上、健康スポーツ医や健康づくりのための健康運動指導士等の運動指導者との連携、食生活改善推進員、禁煙普及員等のボランティア組織や健康づくりのための自助グループの支援体制の構築等に努める必要がある。」とされ「健康運動指導士等」と「等」がつき「健康づくり」の担当とみなされています。そして健康増進に関する施策を推進するため支援者として位置づけられています。
これから地方公共団体は、この政策に基づき、地方自治体ごとに施策事業を策定してきます。その基本にはこの素案で示されている下記のさまざまな目標に準じています。私たちは、これらを把握して我が国の抱える課題に対応した活動をすること。それがまずもって、運動指導専門家が社会で認識される第一歩だと思います。
梅田 陽子
(※1)厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室 次期国民健康づくり運動プラン策定専門委員会 「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」~健康日本21(第2次)~ (素案)
(※2)厚生労働省保険局長、厚生労働省健康局長付、都道府県知事宛 健発第0310007号・保発第0310001号(2008)
次世代の健康
項目 | 現状 | 目標(平成35年) |
---|---|---|
1.健康な生活習慣(栄養・食生活、運動)を有する子供の割合の増加 | ||
ア 朝・昼・夜の三食を必ず食べることに気をつけて食事をしている子どもの割合 | 84.5% (平成17年度) |
100%に近づける |
イ 運動やスポーツをほとんど毎日(週に3日以上、週に7時間以上)している子どもの割合 | 週に3日以上 小学5年生 男子 61.5% 女子 35.9% (平成22年) 週に7時間以上 9歳から11歳 男子 72.0% 女子 59.0% (平成18年) |
増加傾向へ |
高齢者の健康
項目 | 現状 | 目標(平成35年) |
---|---|---|
1.要介護状態の高齢者の割合の現象 | 16.8% (平成21年) |
自然増により見込まれる割合(19%)から2%減少 (平成32年) |
2.認知機能低下ハイリスク高齢者の発見率の向上 | 0.9% (平成21年) |
10% |
3.ロコモティブシンドローム(運動器症候群)を認知している国民の割合の増加 | 今後把握予定 | 現状を踏まえ設定 |
4.就業又は何らかの地域活動をしている高齢者の割合の増加 | 今後把握予定 | 現状を踏まえ設定 |
身体活動・運動
項目 | 現状 | 目標(平成35年) |
---|---|---|
1.日常生活における歩数の増加 | 男性 7,136歩 女性 6,117歩 70歳以上男性 4,890歩 70歳以上女性 3,872歩 (平成22年) |
男性 8,500歩 女性 8,000歩 70歳以上男性 6,000歩 70歳以上女性 5,000歩 |
2.週当たり1時間以上の運動習慣者の割合の増加 | 男性 34.8% 女性 28.5% 70歳以上男性 45.0% 70歳以上女性 35.7% (平成22年) |
男性 60% 女性 55% 70歳以上男性 65% 70歳以上女性 60% |
3.安全に歩行可能な高齢者の増加(腰痛や手足の関節が痛む者の割合の減少(千人当たり)) | 男性 265人 男性 371人 (平成22年) |
男性 200人 男性 300人 |
4.住民が運動しやすいまちづくり・環境整備に取り組む自治体数 | 今後把握予定 | 現状を踏まえ設定 |
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